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「アイスクリーム食べる?」
「どうしようかな。食べる?」
昭和を思わせる暗いオレンジ色の床や、スチールラックのくすんだ色合いのせいか、誰も食べるとは言わない。この先もアイスクリームは至る所で売られているだろうし、なんなら東京でも食べられる。
昼食は海辺のカフェ、と亜矢が言い張るのでそこを目指した。
ネパール人がやっているカレー屋で、白い砂浜にキャンバス地の日よけとベンチとテーブルを出している。
月斗だけがビールを頼んだ。カレーは色鮮やかな器に盛られ、みんなが写真を撮った。そうしてる間に、平たい皿の上でライスがどんどん乾いていく。海風のせいだ。居心地のよさと、カレーの辛さがアンバランスだった。みんなが美味しい美味しい、と食べている中『美味しくないわけじゃないけどちょっと辛い』をどう表現しようか悩んでいると、不意に月斗が、
「寿々音さんは、沖縄来たことあるんだっけ?」
と聞いた。
「ある」
と思わず答えた。それを誰かに言ったのは初めてで、その先のことはできれば簡単に、ごく平凡な旅のように説明して終わらせてしまいたかった。
「ほんとう?」
月斗は続ける。本島?というイントネーションだったので、
「本島」
と言うと、
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