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と桃が言ったが、私には他の三人の方が眩しく映った。斎場御嶽は、かつて特別な女性が祈りを捧げご神託を受けた場所らしく、駐車場からは少し歩くというので、みんなでさんぴん茶を買った。自動販売機ごとに値段が違う。100円のもあれば160円のもあった。
「さんぴん茶って、ジャスミンティーだよね」
と月斗が言い、でもどのボトルにも原料は『さんぴん茶』としか書かれていない。首を捻りながら歩いていく。分かれ道で迷っていると地元の人が、こっち、こっち、と教えてくれた。
道沿いの土産物屋で、桃が夫への土産物を選びたい、とカラフルなシーサーを並べる店に立ち寄った。桃は北京で独り暮らしをしているが、戸籍上は結婚している。相手の男性は岡山の大学で講師をしている研究者だ。結婚前から北京と岡山の遠距離恋愛だったから、桃が単身赴任をしている、という言い方はしっくり来ない。いわば遠距離結婚だ。
「グリーンが好きなんだっけ」
と亜矢が桃の隣から覗き込む。結婚式はあげていないけれど、桃の両親との顔合わせが札幌で行われた。そのときに亜矢も桃の夫に会っているのだ。
「うん、でも緑のは少し顔が恐いかな。こっちの白のほうが可愛い」
見るとそれはひめゆりの塔の土産物屋で見た物とまったく同じデザインだった。
店の中からヘアバンドをした細身の女性が出て来て、そのシーサーを作った人がさっきここへ来たんですよ、と話しかけた。
「もう少しで会えたのにね」
と月斗が言う。
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