ニライ橋・カナイ橋

　みんなコーヒーくらいしか口に出来なかったけれど、それが今日こそはアイスクリームを食べようという意気込みに変わった。
　今朝の空はすっきりと晴れ、風が強い。

「今日は、ニライ橋、カナイ橋に寄ってから、沖縄そばを食べようと思って」

「それは、橋なの？」

「うん、でも絶景スポットなの」

「そういう名前の映画あったよね」

　なんだっけ、ニライカナイって、と言いながら誰も調べようとしない。今日こそはスピーカーから音楽を流そう、爽やかなボサノヴァを、とそっちの方に熱中していると、何かの拍子に軽やかなピアノの音色と歌声がパッと大きく広がった。

「あっ繋がったね」

「小野リサって実在する気がしないなあ。ボサノヴァの声、イコール、小野リサ、という気がする」

　私が言うとみんなが、ああ、かもねえ、と頷いた。

　都市部に向かう渋滞を抜ける。目的地は橋なので、所在地も電話番号もない。カーナビで探すことができないので、助手席の桃はガイドブックを、後ろの私と月斗はスマホを手に、ここ？　あそこ？と、額を寄せ合う。
　山と海の間を走っていると、山の頂上へ向け、ゆるやかにカーブした二本の高架道路が見えてきた。その道に乗るために、交差点で山の方に曲がる。

「ここがそうなのかな？」

「えー、降りられないから、写真は撮れないよ」