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助手席の桃が、運転席の亜矢に向かって、
「Androidはだめなの?」
と問う。
「使えるけど、あんまりうまく行かないんじゃない?」
亜矢があて推量をし、
「ねえ、これ、パスワードかかってるよ」
と月斗。
「あ、そうだった! 01628」
亜矢はためらいもなく言い、それは聞き覚えのある数で、
「市外局番じゃん、地元の」
と桃が笑った。
結局、そのiPadがスピーカーと繋がるよう設定されてるらしく、どうやっても月斗のiPhoneに操作権を譲らなかったので、桃の小さなスマホで音楽を流すことにした。何が聞きたい? という問いに、みんな遠慮して、なんでもいい、と答える。亜矢はオペラ、桃はピアノ、月斗はバイオリンが好きだ。一番音楽にこだわりのない私が「沖縄民謡」にしようと言うと、安堵の空気の中、それに決まった。
三線の音色と、のびやかで鼻にかかった女の歌声が流れ始め、誰からともなく窓を少しだけ開ける。
みんな真面目な性分なので、ひめゆりの塔にまず行くことになった。
駐車場の入り口で、麦わら帽子をかぶったおじさんに、土産物屋を通って記念碑のある公園のへ行くように教えられる。
「別に、通らなくても行けるよね」
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