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お湯の出る音が止まって、湯船とトイレを分け隔てるカーテンが引かれる音がしてきた。
お風呂に入ったのだ。
さて。
それはいい。
それはいいけれども。
純平さんがお風呂に入ってくれた。
それはいい。
それはいいけれども。
彼がお風呂から出てきたとして。
彼がお風呂から裸で出てきたとして。
その後。
彼は一体、何を着るんだろう。
もう一度今着ていたずぶ濡れの青いシャツとGパンを着るのか。
いやそれは無い。
だとすると何だ。何を着るのか。
私は私の頭をフル回転させ、頭の中で私のクローゼットと私のタンスの中身を上から順番にサーチしていった。
何か。
何かないか。
着るもの。
彼が着るもの。
難しい。
彼の身長が、恐らく175㎝くらい。
私の身長が155㎝。
20㎝の差。
これをカバーする服。
私のタンスの中に。
難題だった。
しかし。
かろうじて私は引っ張り出した。
ダボダボで私が着ると膝下まである胸にピンクのハートが描いてある恥ずかしくて寝巻にしか使えない昔父からもらって捨てられずにいたどこかのお土産の白いTシャツ。そしてタンスの最奥部に眠っていたのはその昔私が女子高生だった頃演劇部の公演にゲスト出演した際に衣装として着せられたブカブカの古着のオーバーオール。
あるもんだ。
探せばあるもんだ。
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