真面目過ぎる私が結婚したいので<前編>

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 チカチカ。さっきから私の目の端っこに映っている点滅。わずらわしい。検索サイトの画面の右側に、点滅している四角いボタン。「出会い」と書いてある。きっと検索サイトが私の年齢と境遇を何らかの方法で知っていて、私の条件に合わせた広告を打ってきているのだ。ほらこれ。あんた求めてるんでしょ?という訳だ。ははん。と私は思った。そんな手には乗らない。私はそんな馬鹿じゃない。  私は気を落ち着かせるために、一旦冷蔵庫に行った。まだ仕事着のままだったが、着替えるのは後回しにした。冷蔵庫からビールを取り出す。冷えた缶ビール。そうだ。私はビールを飲むのだ。ビールと言っても発泡酒だけど。そう。ビールってこういう時のためにあるんじゃん。栓を開ける。コップに移す。お台所で立ったまま、ガブっと飲んでみる。プハー。美味い。これでなくちゃ。一人暮らしを始めてかれこれもう十四年目に突入したけど、これが一人暮らしの醍醐味じゃん。これが一人暮らしの幸せなんじゃん。仮にもしここに母がいたとしたら。私の母はきっと怒り出すだろう。すごい剣幕で怒鳴り、娘の愚行を今すぐこの場で正すに違いない。それが娘のためだと思って。それが娘に対する躾であり、その躾がゆくゆくは娘の将来を明るいものにするのだと考えて。娘の将来が、良い大学を出て良い会社に就職し、良い旦那さんの所に嫁に行くという明るい将来につながるものと考えて。
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