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私が三口食べる間に純平さんは丼ぶりの底に付いている細かなご飯粒とだし汁を含めて全てを平らげてしまった。そしてお味噌汁をすする。これも美味しいでしょう? ジャガ芋最高でしょう? ホックホクでしょう? 私は四口目を食べる前にすっくと立ち上がり純平さんの右手によってテーブルに置かれた丼ぶりを取り上げた。有無を言わせない。ウンもスンも無い。私はそのままキッチンに行くとお釜を開けてホカホカご飯を丼ぶりに投入。そしてフライパンに残った親子をその上に載せてあげる。タレをかけて。ほら。純平さん。二杯目。
「ありがとうございます」
ようやく言った。ようやく純平さんがそう言った。それが私達が再会を記念して乾杯をしてから初めて交わされた、お食事中の会話だった。いいのよ。純平さん。いいの。大丈夫。さあ、食べて。お腹空いてたんでしょう。食べて。そして飲んで。そう。純平さんは食べる。二杯目を食べる。二杯目の親子丼を。ホクホクの親子丼を。私はただひたすらに食べている若人を横目で眺めつつ立ち上がり、二本目の缶ビールをテーブルに運んだ。口を開け、コップに注ぐ。そして飲む。自分で飲む。ああ。純平さん。いい食べっぷり。惚れ惚れする。眺めているだけで幸せな気分になる。いい。若いって。いい。すごくいい。
そうして、私達は完食した。あっという間だった。親子丼とお味噌汁。小鉢のキムチ。三本の缶ビール。丁度よかった。測ったように丁度よかった。丁度よい分量だった。
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