83人が本棚に入れています
本棚に追加
駄目だ。
駄目だった。
私は解決方法を持っていない。残念ながら、私の中にはこういう場合どうしたらいいのか、参照できる事例も参考にできる引き出しも無い。私にとって初めての体験だった。男の人が泣いている。目の前で泣いている。こらえようとしてるんだ。でもこらえきれないんだ。こらえきれない涙が純平さんの頬を伝っている。次々と流れている。涙が服を濡らしている。オーバーオールを濡らしている。
これは嬉し泣きではない。
それはわかる。
悲しいのか。
悔しいのか。
何かあったのか。
思い出しているのか。
わからない。
想像できない。
私は自分の不甲斐なさを呪った。
私は無力だ。
まるで無力。
目の前で泣いている人に対して、私はまるで無力だ。
私はティッシュの箱を取ってきて、目の前で泣いている若人にそれを手渡した。
私にできることはそれしかなかった。
純平さんは鼻をかんだ。
でも嗚咽は収まらない。
泣く。
まだ泣く。
仕方なかった。
仕方なく、私は空いた食器を重ねて盆に載せて、流しへ持っていくことにした。
でもまだ泣いている。
純平さんが泣いている。
鼻をかんで、また泣いている。
<んで、つづきます>
最初のコメントを投稿しよう!