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「どうですか」と後ろにいた店員のおじさんは言った。「見えますか。大丈夫ですか」
「はい」私は答える。
「いいですね」
「は?」
「眼鏡がないお顔の方がいいですね」
そう言っておじさんは笑った。多分どんな人に対しても、初めてコンタクトレンズを買ったお客さんに対しては、そんなふうに言うのだろう。いわゆる営業トークというやつだ。それはわかっていた。だけど私は、それでも気分がよかった。眼鏡がない私。軽くなった気がした。これまで、眼鏡が私を縛っていたのかも知れない。私を真面目な私に縛っていたのは、眼鏡だったのかも。そんな風に思った。もう一度鏡を見ると、鏡の中の私が微笑んでいた。いいかんじじゃん。我ながら。いけるかも。その瞬間に、私はそう直感した。
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