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やっと今夜でここから解放される。
明日から東京で、人目気にせずやっていく。
3月終わりの桜を見ながら深呼吸。
中庭を挟んだ部屋にはママの背中。ママが弾いてるユーモレスク。
「10時ちょうど」
一日の締めにママはアレを弾く。
ママはピアノの先生、この明石・須磨浦界隈じゃ有名。
「宝塚や音大へ入れたいなら、
“あの先生や“」
って言われてる。ついでに
「オメカケさんやけどな」
っていうのも添付。
明石・・・嫌いな町や!小学校までは近所へ通ってたけど
「栞奈ちゃん、オメカケさんの子なん?」
同級生が聞きよった。
「妾の子でもお前らとは出来がちゃう!」
ガンガン勉強した、国立付属から現役東大。私のこと“妾の子“て言うた奴、20以上の大学にフラレてまだ決まらんらしい。
「ざま、見さらせ!」
駅で会うた時、一瞥したった・・・
「あ~~~あ」
な・・・これ、これや、ここ(明石)でおったら“嫌みな子“になってしまうねん!だって私、
「オメカケさんの子、なんやもん・・・」
ソファへ寝そべって“モンタちゃん“に言う。
パパは関西でも有名な建設会社の社長さん。
『48歳、日本の建設業界を担う』とか経済雑誌で出てたときはビックリやったわ。
ここではいつも笑うてる普通のオッチャンやもん。まあ、背が高くてイケてる感じはあるけど。ママとどう知り合うて“私“に至ったのかは知らん話。
ああ、普通の家庭に生まれたかったわ。いつもパパが家に帰ってきて、土日は一緒に出掛けて・・・
「まあ、それ以外は普通やねんなあ」
パパはここではホンマに普通。友達が
「ゴロゴロして、テレビ見て」
せやせや、
「『たまには娘を叱ってよ』ってママに文句言われても私の言いなり」
せやせや・・・そう。普通の楽しい家庭。でもアカン!
「結局、パパは“ヨソの人“やねん!」
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