もう天使ではいられない 5 ユーモレスク

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やっと今夜でここから解放される。 明日から東京で、人目気にせずやっていく。 3月終わりの桜を見ながら深呼吸。 中庭を挟んだ部屋にはママの背中。ママが弾いてるユーモレスク。 「10時ちょうど」 一日の締めにママはアレを弾く。 ママはピアノの先生、この明石・須磨浦界隈じゃ有名。 「宝塚や音大へ入れたいなら、  “あの先生や“」 って言われてる。ついでに 「オメカケさんやけどな」  っていうのも添付。 明石・・・嫌いな町や!小学校までは近所へ通ってたけど 「栞奈ちゃん、オメカケさんの子なん?」 同級生が聞きよった。 「妾の子でもお前らとは出来がちゃう!」 ガンガン勉強した、国立付属から現役東大。私のこと“妾の子“て言うた奴、20以上の大学にフラレてまだ決まらんらしい。 「ざま、見さらせ!」 駅で会うた時、一瞥したった・・・ 「あ~~~あ」 な・・・これ、これや、ここ(明石)でおったら“嫌みな子“になってしまうねん!だって私、 「オメカケさんの子、なんやもん・・・」 ソファへ寝そべって“モンタちゃん“に言う。 パパは関西でも有名な建設会社の社長さん。 『48歳、日本の建設業界を担う』とか経済雑誌で出てたときはビックリやったわ。 ここではいつも笑うてる普通のオッチャンやもん。まあ、背が高くてイケてる感じはあるけど。ママとどう知り合うて“私“に至ったのかは知らん話。 ああ、普通の家庭に生まれたかったわ。いつもパパが家に帰ってきて、土日は一緒に出掛けて・・・ 「まあ、それ以外は普通やねんなあ」 パパはここではホンマに普通。友達が 「ゴロゴロして、テレビ見て」 せやせや、 「『たまには娘を叱ってよ』ってママに文句言われても私の言いなり」 せやせや・・・そう。普通の楽しい家庭。でもアカン! 「結局、パパは“ヨソの人“やねん!」
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