もう天使ではいられない 5 ユーモレスク

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「弾き納め」 「 ? 」 中庭のサンダルを突っ掛けて庭にでた。 「なんで?東京でも弾いたらエエやん」 ママの背中に言うた。 ママは指を止めて 「もう弾かへん・・・  これはパパへのラブコールやから」 うわあ・・・子供相手に何言うてんの・・・ ママは鍵盤をポロポロ叩きながら こっちは向かへん。 「パパとは東京の音大の同級生やった。  パパ、ああ見えてもバイオリンでは  なかなか有望やったよ」 「へえ・・・」 「卒業したら結婚して一緒に  留学しようって約束して・・・」 「へえ・・・」 「でも、アカンかった・・・  パパのお父さんと兄さんが  事故で急に亡くなって、  パパが会社を継ぐことになって・・・」 「それと結婚は別ちゃうの?」 「その頃パパの会社、大変でね、  資金繰りのために銀行の娘さんと  結婚したの」 「・・・へえ・・・ママ、捨てられたんや」 「捨てたはチャウなあ、  キチンとお別れしたよ 『別々に頑張ろう』って」 「じゃあ、なんで私おるの?」 「何年かして偶然、バッタリ、会うた」 「ふ~~ん・・・で、」 “オメカケさん“、と言いかけて 「ルール違反な交際になったわけやね」 言葉は選んだ。 「そうやね、ルール違反やね。  パパはもう結婚して  男の子さんもいてはったんやから」 ・・・兄さん・・・おるんや・・・ 「それでも会わんとおれんかった。  栞奈、アンタがお腹におるって  判ったとき、迷わんかったわ。  嬉しかった、ホンマに!」
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