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結局僕は、翌日には電車に乗って封筒の宛先に向かっていた。 「たとえ不倫でも、終わった男のことなんか、女って速攻で忘れるんだろうな」  僕は車窓から後ろへ押し流される風景を眺めながら心の中でつぶやいた。 開封は怖くてできない。 だから宛名の女がどんな女なのかを確かめるのだ。  住所は田舎というか、小さな市を二つ越えたその先の町だ。  しばらく揺られて、ようやく到着した駅は意外に大きかった。  事前にググってマップを調べていたのだが、タクシーを使ったほうが早そうだ。  タクシー乗り場へ行くと、一台だけ待っていた。 「えっと、奈美野区宮川三丁目、五番地お願いします」  座席に座りながら行先を告げると、 「ん? シザーハウス石倉かい?」  と、年配の運転手がたずねてきた。 「バスのほうが安いけどね」 「あ、いえ、僕この町に来たの初めてなんです。だからタクシーでいいんです」 「そうなの。じゃあ、帰りも電話で呼んでくれたら向かうよ」  優しい声とともに、車が発進した。 「初めて来た町でいきなり理容院かい? 不思議な人だねぇ」  右折のウインカーをあげながら、運転手は言った。 「父親の古い知り合いで」 「そう」  それっきり車内は静かになった。
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