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「へっ? ばーちゃんを? なんでまた?」
ばーちゃん。
ばーちゃんと言ったか今。
「そのう、特殊な事情がありまして……。僕、藤浦市から来たんです」
「遠い! ばーちゃんにこんな若い知り合いいたの驚き!」
とたんに、客がげらげら笑った。
「え、ちょっと、なんかすみません」
僕はわけもなく謝ってしまった。
「あはは、いいのよ、ちょっと待ってね」
女性はタオルを持ったまま奥へ行った。
「わし、あとは会計するだけだから、気にしないでな」
客は鏡越しに僕を見て笑った。
「なんか、すみません」
「学生さんかい?」
「はい、今大学四年生です」
「立派なもんだな」
そのとき、女性が老人の手をひいて店内に戻ってきた。
「はい、ばーちゃん段差気をつけてね」
「そんな心配は十年後にしなさい」
石倉麗子の眼光に、僕は一瞬戸惑った。
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