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淡い栗色の長い髪に翡翠色の着物を纏った可憐な少女。まだ幼さの残る顔からは、到底鬼が見えるようには思えない。
……バカっぽそうだし。
「私、はなです!鬼さんの名前はなんですか?」
笑顔が眩しい。純粋すぎる、何の不純物もない笑顔。名前ーー聞かれてはじめて持ってないことに気づいた、自分はあくまでも鬼。それ以外の何者でもないーーそれがあまりにも悲しくて。つい、酷いことを言ってしまった。
「そんなものねぇよ。お前ら人みたいな価値のある存在じゃないからな」
少女からの返答はない。
さすがに怒ったのだろうか。自分で言って落ち込むなんて、馬鹿みたいだ。
もう、帰るか。
…………闇しかないあの場所へ。
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