始まりのはな

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春の優しい光が花里に降り注ぐ。春の女神の祝福とされていて、人はみんな手を合わせてお祈りをする。 ーーおれには理解できねーけど。物好きだよな人は。 桜の枝からこっそりその様子を盗み見る。鬼の瞳は人よりも遥かに優れていて、離れていても問題ない。暇潰し程度の理由で見始めてから、もうどれくらい経つのだろう。 どれくらい…… 「誰かいるの?」 ……気配消してるんだぞ。なんでわかるんだ? 人に見つかる日が来るなんて、夢にも思わなかった。そもそも人とは触れ合えぬ者だというのに。 「……もしかして鬼さん?」 ぎくりとし、一瞬心がざわつく。 なんでわかるんだよ? ずっとーー隠してきたのに。 ずっと、気づかなかったのに。
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