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私の視線の先には怯えた子犬のような瞳をした小柄な男子生徒? が一人。
何故疑問系かというと、制服は男物だが顔がどう見ても女の子だからだ。そこら辺のアイドルより可愛いぞおい。
「す、すまんな。こいつは借りていくから、取り敢えず君も放課後職員室に来るように。色々話が聞きたい」
「は、はぃ……」
「……わ、私は東雲というから、訪ねてくるんだぞ」
簡潔に伝えた私は素早く前に向き直り、素早くその場を後にする。理由は単純、あの子が可愛すぎてこれ以上そばに居たら抱きしめたくなってしまうからだ。
普段は顔がキツイと言われる私だが、これでも可愛いモノにはめっぽう弱い。あれは危険だ。気をつけなければ。うん。
因みにだが、急いだせいか生徒指導室に到着すると遠藤が青い顔で気絶していた。私は悪くないと思う。
***
先生に呼び出しを受けた。確か僕が入学してくるのと同じ時期に入った先生だったと思う。だけど、話したことが無いし、話し方が男みたいだったし、その、怖い。
僕――相原春樹は数時間前の出来事を思い出し、一人深い溜息を吐き出した。
確かあの先生は放課後になったら職員室に来いって言ってたけど、今はもう十八時過ぎ。流石にもう帰ってしまっただろう。次顔を合わせたら怒られるんだろうなぁ。
そんな事を思いながら、僕は重たい脚を職員室へと向けて動かした。
何故こんな時間になってしまったのか。それは単純に僕がビビりなせいだからだ。
今迄の経験上、ああいった凄く綺麗で男勝りな感じの女の人は僕を虐める。女性物の服を無理やり着せようとしてきたり、皆の前でズボンをずらされたり。酷い時は靴で顔を踏まれたりした。一部の特殊な人からは〝ご褒美〟なんて羨ましがられたけど、普通の感性しか持ち合わせていない僕にとって、あれは拷問と同じようなものだ。
道すがらそんな苦い経験を思い出していた僕は、気が付くと職員室の前で立ち止まっていた。
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