コルク

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 当時、コルクでしたわたしは博士に依頼し、姿を芳川愛美に似せてほしい、と懇願しました。博士はなかなか首を縦には振りませんでした。なぜなら、ロボットを人の姿に似せるのは罪だったからです。完全に分けることでこの世の秩序は保たれていたのです。  わたしの背中を押してくれたのは芳川行徳でした。外に出さなければ問題ない、出ようとしたら破壊すれば証拠は消える。そのため、改造過程でわたしの頭の中に爆弾が浸けられました。センサーで敷地内から出ると爆発するのです。  芳川愛美の姿になったわたしを見て、玲央は凝視しました。その時、初めて彼はわたしを見ました。怯えた表情の中に見せる。安堵した眼差し。玲央とは言葉を交わしたのもその時が初めてでした。質問にゆっくりと答えていき、どうやらわたしは姉ではないと頭では理解している様ですが、心が姉と接しているように思っているみたいでした。  半年が経ち、わたしは夜以外も一緒にいるようになりました。玲央も心が穏やかになりました。思考も徐々に正常になり、勉学はもともと申し分ないため、より自分に磨きをかけるようになりました。しかし、わたしの前ではコルクという名前を甘えた声で出して呼んだり、駄々をこねる子供のように抱きついてきました。わたしはこの時の玲央が愛しいと感じていました。  玲央の態度がわたしを変えてしまい、わたしはロボットである自分に嫌気を感じました。  わたしは玲央と本当の夫婦のように暮らしたかったのです。
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