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ミス・ウォーズリー
ベーカリー“ミス・ウォーズリー”が出来たのは二ヶ月前である。
その名の通り店主はミス・ウォーズリー。壮年の女性だ。滅多に人前に姿を見せないから、出回っているのは痩せぎすで魔女のような女という情報くらい。
パン屋だというのに常に日差し避けのブラインドがきっちり閉められており、中の様子は全く見えない。どうにも怪しげな店構えであったため開店から半月ほどは人の出入りがなかった。
しかしどこかの命知らずが店に足を踏み入れたらしい。すぐに口コミが広まり、今や朝から長蛇の列が並ぶ超人気店である。
ロイは姉のリゼがコソコソとミス・ウォーズリーに通うことが気に食わなかった。最初こそ興味がないわと知らんぷりしていたのに、今朝もこっそり家を出て列に並んだようだ。
――姉さんはあんなミーハーな人じゃなかった。
ロイはついに我慢ならずリゼの後を追ってミス・ウォーズリーに向かった。
パン屋の前は人でごった返している。そこにいるのは殆どが女性、しかも妙齢だ。ロイは少し離れた場所からリゼの姿を探した。
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