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「ただいま」
「あ、和音さん。お帰りなさい」
そのまま放心していても埒があかないため、仕方なくプレゼントボックスを手にしたまま、和音は帰宅した。
何だか仕事より疲れた気はするが、こうして家に帰ると笑顔で迎えてくれる相手がいる、というだけでそれも吹き飛ぶから不思議なものだ。
和音はすぐさま笑みを浮かべる。
「悪ぃな、待たせた」
「いえ。ご馳走、出来上がってますよ」
リビングに入るまでの廊下で秀臣に鞄を預け、脱いだ背広まで手渡すのがすっかり日課と化している。
まるで夫婦みたいな日課だが、和音にとってはそれが欠かせない、大事な行為となっていた。
「先に着替えます?」
「おぉ。良いか?」
「はい。じゃあ、先に部屋に行きましょう」
行き先はリビングではなく寝室に決まった。
秀臣もスーツから私服に着替え済みだし、折角ご馳走を食べるのだから、ゆっくりとしたいものだと思うのだ。
手早く着替えている間、傍で秀臣がてきぱきとスーツを片付けてくれる。
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