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着替えも終わり、玄関に設置してあるトレーから入手していた指輪を、ゆっくりと感触を楽しみながら左手薬指にはめる。
すると、何故か背後から小さな笑い声がした。
「……何だよ」
振り向いて不服そうに眉根を寄せるが、秀臣の笑いは止まらない。
「済みません。いつも幸せそうに指輪はめてくれるなぁって」
「何だよ。……別にそんなつもりねぇし」
指輪のはまった指を隠すと、照れ隠し代わりにわざとらしく口を尖らせながら抗議するが、残念ながら全部見抜かれている秀臣には通じない。
「まぁそういう事にしておきます。じゃあ、冷めるから食事、しましょう」
「……うん」
手を差し伸べられて、そこは素直に頷くと、そのまま手を繋ぐ形で寝室から出る。
二人無言で歩く廊下は少しばかり寒いが、それでも繋がれた手は暖かい。
その事実に安堵する和音に、背中越しに秀臣が放つ。
「それでですね、和音さん。プレゼントボックス、結局返してないのは、何故なんですか?」
「は?」
完全に忘れ去っていた。
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