第二章・―チョコじゃない、行方は気になる―

7/19
前へ
/25ページ
次へ
 着替えも終わり、玄関に設置してあるトレーから入手していた指輪を、ゆっくりと感触を楽しみながら左手薬指にはめる。  すると、何故か背後から小さな笑い声がした。 「……何だよ」  振り向いて不服そうに眉根を寄せるが、秀臣の笑いは止まらない。 「済みません。いつも幸せそうに指輪はめてくれるなぁって」 「何だよ。……別にそんなつもりねぇし」  指輪のはまった指を隠すと、照れ隠し代わりにわざとらしく口を尖らせながら抗議するが、残念ながら全部見抜かれている秀臣には通じない。 「まぁそういう事にしておきます。じゃあ、冷めるから食事、しましょう」 「……うん」  手を差し伸べられて、そこは素直に頷くと、そのまま手を繋ぐ形で寝室から出る。  二人無言で歩く廊下は少しばかり寒いが、それでも繋がれた手は暖かい。  その事実に安堵する和音に、背中越しに秀臣が放つ。 「それでですね、和音さん。プレゼントボックス、結局返してないのは、何故なんですか?」 「は?」  完全に忘れ去っていた。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加