第二章・―チョコじゃない、行方は気になる―

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「わぁ! めっちゃご馳走!」  リビングに着いて、テーブルを見るなりはしゃぎ出す和音を横目に、秀臣がてきぱきと食事する用意をこなしていく。  今日は和音のために腕をふるい、大好物ばかり作ったのだ。  だし巻き卵に南瓜の煮物、それに炊き立てご飯とお味噌汁。  メインは奮発して、最上級のステーキだ。  それらがテーブルの上でホカホカと湯気を立て、口に入れてもらえるのを今か今かと待っている。 「めっちゃ美味そう! しかも大好物ばっか!」  そそくさと座する姿は、まるで子供そのものだ。  取り敢えず喜んでもらえて良かったと、秀臣も席に着く。  そうして二人、向かい合わせになると、静かに両手を合わせる。 「いただきます」  これも、二人が一緒に暮らし始めてからの儀式というか、日課となっている。  「いただきます」を言える事に幸福を感じるのだと、和音がぽつりと漏らしたからだ。  だから、秀臣からそうするように提案した。
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