第一章・―初めてのバレンタイン―

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 とあるオフィスにて、デスクの上に鎮座するプレゼントボックスを前に、(みや)(しろ)(かず)()は固まっていた。  逞しい身体つきに黒い艶のある髪を短くまとめ、切れ長の瞳が強気な印象を与える和音は、ボックスから目を離さずにいる。  一体誰がこんなものを置いたのか?  そう言えば今朝、同棲中の恋人が「付き合ってから初めてのバレンタインですね」と、嬉しそうにしていた。  和音も内心では同じ気持ちであったが、照れ臭くて素っ気なくしたばかりであった。 「チョコかと思ったら……」  取り敢えず手に取って見るが、ダークブラウンの包装紙に英字が印刷され、光沢のあるダークブラウンのリボンに包まれたボックスから中身を想像する事は叶わない。  ――ただ、書かれていたのだ。  ハート型の可愛らしいメモに、「チョコじゃないです」とあった。  じゃあチョコの類いではないのかと、素直に信じてしまう。  誰がプレゼントしたのかは謎なのだが。
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