第二章・―チョコじゃない、行方は気になる―

15/19
前へ
/25ページ
次へ
「……本当にさ。昔の境遇からは、信じられないくらい。俺は今、幸せだよ」  耳元で囁くように伝えてくれる和音の身体は、僅かながらに震えている。  抱き締め合った状態からでは確認出来ないのだが、顔は確実に赤くなっているのだろう。秀臣は、そんな和音を更に愛おしく感じて抱き締める手に力を込めた。 「……和音さん。俺も和音さんと出逢えて幸せです」  お互い過去に多大なる傷を心に負って、もう二度と人から愛されたり、人を愛したりする未来はこないものと諦めていた。  そんな和音の心を秀臣が癒し。秀臣が抱えるトラウマを、和音が大きな度量で受け止めてくれて、優しく包み込んでくれたのだ。  同性カップルで、社会的にはオープンにしても大丈夫とされる雰囲気になってきてはいるが、現実ではまだまだ世間は二人に厳しくあたるだろう。  会社にも、当然の事ながら二人の関係性を明かせる相手はいない。  全くいない訳でもないのだが、それでも口外をしないと、二人が信頼した相手にしか喋っていない状態だ。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加