第一章・―初めてのバレンタイン―

4/6
前へ
/25ページ
次へ
「……だって、お前が言ったんだろ。俺達にとって、初めてのバレンタインですねって、今朝……」 「あ。いや。今朝、めっちゃ怒られたから、気にしてないんだと思ってました」  言われて和音も気付く。自分の照れ隠しに笑って返してくれたが、あれはあれで目茶苦茶気にしていたのかと。 「お、俺だって……。ちょっと、嬉しかったし」  だから思い切って本音を漏らしてみる。  きっと顔どころか耳まで真っ赤なのだろうが、今の和音には気にしている余裕すらないのだ。 「和音さん、済みません。ちゃんと話、聞きますから」  すると秀臣も、さすがに悪かったと、平謝りするのに、ようやくの事で視線だけ向ける事に成功する。 「差出人不明なんですよね? 手がかりとかはないんですか?」 「ん」  これしかないと、メモを見せるとにっこり笑ってくれた。 「あー、これならすぐ分かりそうですね。俺、顔だけは広いんで、他部署の友人に、それとなく聞いてみますよ」  メモを受け取るなり早速問題が解決しそうな兆しが見えて、和音も内心でほっとする。
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

30人が本棚に入れています
本棚に追加