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少女は死にたかった。少女は不幸なわけでもなく、毎日が楽しかった。それでも、常に憂鬱な気分だった。
少女はこう言う。
「世界で一番私が嫌いなのは私だ」
と。そして同時に、世界で一番私のことを嫌っているも私だと言う。
少女はある日、本当に死のうと思った。
理由はほとんど無いに等しい。しかし強いて言うとしたら、親友と喧嘩したことである。すぐにお互い謝ってそれ以上は発展しなかったものの、自身が親友にかけてしまった酷い言葉の数々を思い出して、少女はこれまでに無いほど死にたくなっていた。
少女は楽な死に方を調べたが、すぐに出来ないものばかりだった。
せめて発見を遅らせようと考え思いついたのは絞首自殺だった。
それも樹海で。
樹海ならほとんど見つかることはないだろう。明日のニュースに行方不明と出るかもしれない。
少女は1本の丈夫な縄だけ持って、勇んで樹海に踏み込んだ。
そこはあまりにも静かに自然が息巻いている場所だった。中ほどまで進もうと思い歩いていると、2人ほど絞首死体を見つけた。少女は安心した。仲間がいるようだ。ゆっくりとその鬱蒼とした森林の中を歩いていると、心が浄化される気持ちだった。そして少女は瞬時迷った。
このまま帰ってしまえば、どこ行ってたのと怒られて終わる。
そして、この森林の効果によって私は少しでも変われるかもしれない。浄化されたのかもしれない。
それでも少女は歩いた。もう、帰り道がわからないのだ。立ち止まってしまった少女には、どこから来たか、今どの道を歩いていたのかさえ分からなかった。
少女には、なんだか自分の存在が馬鹿馬鹿しいほど小さく見えた。切り株に座り込んで、縄を見つめた。
「死にたい……?」
少女は声に出して言ってみた。でも、それが今になっては自分の本当の気持ちとは思えなかった。
樹海に全てを見透かされているようだった。
自分を取り巻く樹木たちが、少女を嘲笑っているようだった。
そんなことで、もう終わってしまうのかと。
少女は悔しくなってきて、立ち上がって歩き始めた。
ひたすらに真っ直ぐ、真っ直ぐ歩いた。一回も立ち止まらなかった。
そして、少女は樹海から出た。そこは入った場所と同じだった。
帰ってこられたのだ。
少女は少し後ろを振り返って、すぐ手の届くところにあった木の枝に縄をかけた。
少女は鬱蒼とした森林の中、何を思って死ぬのをやめたか。
それは、誰にもわからない。
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