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いつもの朝と同じようにロッカーを開ける。
いつもの朝と同じよう教科書を取り出す。
ドンと比較的重い音が俺の爪先辺りに響く。
まさか、、、。
今日は2月14日。
それはよく見る長方形で厚みもある。綺麗にラッピングされ控えめに赤いリボンもついている。
板チョコの形だよな、、、
ロッカーの扉に手を掛けたまま、ぼーっと爪先辺りを見て理解する。
義理チョコ、、、?
なんだか鼓動が早くなり両足が動かない。
俺の爪先から1㎝先にある長方形のそれを手にする事が出来ない。
義理チョコとは言え生まれて初めて経験する事というのはみんなこんな感じなんだろうと冷静に感じつつも真っ赤になっているだろう顔が熱くてたまらない。だんだんと体中が火照りだし鼻づまりで全く通らない鼻の通りが良くなって、思いっきり鼻水をすする。
誰にも気付かれないように小さく呼吸を整え右手を長方形のそれに差し出す。
触れると少し柔らかい。
ん?生チョコ?
、、、、いやいや、普通箱に入ってるんだから触った時の柔らかさは感じないだろう。
また呼吸を整える。
右手でしっかり持ち上げロッカーのドアも閉めずにダッシュでトイレに走り個室のドアを閉める。
フゥー。
一安心したのも束の間、すっごくうんこを我慢していたやつが蒙ダッシュでトイレに駆け込んだと思われたらどうしよう。
また体全体が熱くなってくるのを感じつつも感じきらないうちに長方形に綺麗にラッピングされたリボンをほどき包装紙を破り捨てる。
メッセージカードにはこう書いてあった。
「痩せたらかっこいいかもよ!」
ん?
告白?
いたずら?
からかってんの?
一瞬力が抜けて、ドンとメッセージカードと共に俺の爪先1㎝先に落ちたものは、家の近所のスーパーに売っている1つ98円のこんにゃくだった。
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