昼下がりのカフェ・だんがりおん

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昼下がりのカフェ・だんがりおん

「……でさ、あたしその子に言ったのよ。それはもっと強く言わないと、て。」 「そうなんですか。」  窓からの木洩れ日も眩しい午後のカフェ。今日は店主が不在でパティシエの坊やがカウンターに立って珈琲をカップに注いでいる。カウンターの客は、何処か『仲村さん』に似ている彼に友人との話を話して聞かせていた。  ドアに取り付けたカウベルを鳴らして店に入ると、マスター代理の坊やが「いらっしゃい。」と挨拶をくれる。私の古くからの友人も、彼ぐらい愛想を振り撒けば良いのに。 「『僕ちゃん』が、カウンターに居るってことは、店主は今日は休み?」 「ええ、『仲村さん』を動物病院へ連れてってるんです。」  『仲村さん』と言うのはこの店の看板犬で、店主の飼い犬。「『仲村』の犬だから、それで良いだろう。」と、彼は言うのだが……。 「ねえ、『仲村さん』って犬の名前として、おかしくない?」  カウンターの端っこの席に座って『僕ちゃん』に言うと、彼は肩を軽く上げて首を傾げた。 「まあ、あまり聞きませんけどね。でも、『仲村さん』も、それが自分の名前だとおもっちゃってるから、今更どうしようも無いですよ。」     
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