再び

2/2
前へ
/30ページ
次へ
先生とコイツを鉢合わせさせたくない。 俺はどうすれば先生を守れるか頭の中で考えを思い巡らせた。 「へぇ、美人だね。義兄さんの彼氏?」 「あ」 「歯医者だよ」 先生の声を遮って俺はきつい口調で言い捨てた。 背後で先生が固まった気配を感じた。 けど先生が和哉に絡まれないように、話に少しでも早くキリをつけたかった。 俺はただ、先生が誤解して傷ついていないことを願っていた。 「ああ、先生か。 タケルの弟の和哉です」 「歯科医の長谷川です」 先生は俺の様子から何かを感じとってくれたようで、普段の落ち着いた歯医者の顔で返答した。 皮肉なことだけど、先生が今までの経験から人付き合いに用心深いことに助けられた。 和哉はふっとため息をつくと、肩をすくめて笑った。 「義兄さん。 感動の再会なのに義兄さんがピリピリしてるから、歯医者さんにまで警戒されてるじゃん」 「用件は何だ」 俺が家を出てから何年もたつのに、今さらなんだって言うんだ。 「あまりに俺を避けるから、何か勘違いしてるのかと思ってさ」 「勘違い?」 「俺は義兄さんを嫌いなわけじゃないよ。 家に帰っておいでよ。 皆待ってるから」
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

48人が本棚に入れています
本棚に追加