48人が本棚に入れています
本棚に追加
「何を言ってこようが俺達には関係ない。
お前に漬け込む余地はない」
和哉に言葉を吐き捨てると鍵を開けて家に入った。
強気に出たものの、気が気ではなかった。
いつまでたっても和哉の動向が気になって、夜になっても寝付けず、ビールでも飲めば寝れるかと思いコンビニに行こうと外に出ると、もう和哉の姿はなかった。
俺はただ、先生が俺だけを信じてくれるよう祈るしかなかった。
翌朝いつもの時間に病院の前を通ると、先生が日課の掃き掃除をしていた。
普段通りに生活している姿が見えて、ほっとした。
「先生、おはよう」
「おはようございます。
昨日はバーベキューありがとうございました。
片付けまで全部引き受けてもらって」
「全然。
また行こうよ。
あれ…、今日はタートルネックなんだ」
先生の朝の姿は決まってオフホワイトのトレーナーなのに、今日に限って同色のタートルネックになっている。
「朝、コーヒーを溢してしまったんです」
「大丈夫?
火傷しなかった?」
「それはないです。
ありがとう」
「ならいいけど。
俺 、先生の肌綺麗で好きだから傷つくのは嫌だからね。
今度チェックするから」
「タケル君は、ほんと心配性ですね」
苦笑する先生は照れて赤くなっていた。
ずっと一緒にいたい気持ちを抑えて俺は駅に向かった。
先生と会った後のふわふわとした甘い余韻に浸っているうちに、俺の中にあった危機感はいつの間にか消え失せていた。
最初のコメントを投稿しよう!