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二階に上がると俺の部屋は一応残されていた。
荷物は引っ越しのときにほとんど運んでしまったけど、学習机やベッドはまだ置かれていた。
俺は運んできたキャリーバッグを開いた。
中には何も入れてこなかったから空っぽだ。
俺はここにある自分の写真やら残っていたわずかな私物を思い出す限り全てキャリーに詰めこんだ。
足音もなく近づかれていて、気付いたときには和哉に口を塞がれていた。
「止めろっ!」
「義兄さん、しようよ。
昔みたいに、壊れるくらい抱いてほしい」
「ふざけるな!」
「オレ、義兄さんと住みたい。
そしたら、いくらでもやらせてあげるよ」
「俺のことは始めから居なかったと思って忘れてほしい。
俺が和哉を好きだと言った時に家族は俺を受け入れてくれなかったんだから。
もう俺には俺の今の生活がある。
和哉、もう来ないでくれ 」
家のために有給なんか使う気にもならなかった。
俺は終電に間に合うように急いで靴を履いた。
ここから一刻も早く立ち去りたい。
駅に向かおうと玄関を飛び出すと、前に車が止まっていることに気づいた。
運転席のドアが開く。
降りてきたのは、先生だった。
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