7人が本棚に入れています
本棚に追加
第15章(君がくれた奇跡)
ある朝、いつものように脇でくるまりながら眠るラッキーを起こすと目を開けようとしない。
余程眠りが深いのかな?と思い、何度か「ラッキー」と起こそうとするが、それでも動こうとはしなかった。
そう……ラッキーは永遠の眠りについた。
覚悟はしていた……。
ラッキーは今にも起きそうな表情だった。
幸せそうに口の端を少し上にあげていた。
まるで微笑んでいるかのように。
泣かないと決めていたのに…自然と流れ落ちる涙を止める事は出来なかった。
そんな私を後ろから優しく抱き締めてくれる母。
母もまた私に聞こえぬように泣いていた。
硬直してゆく身体を、清潔なタオルで拭く。
その後、惜しみつつも呆気なく火葬されていったラッキーの亡骸を、近くの動物霊園に埋葬した。
ラッキーが亡くなってから数ヶ月経ち。
私は、花壇に花を植えようと庭に出ると一輪の蒲公英の花が咲いていた。
「何でこんな所に蒲公英が?」
よく見ると、少しだけ盛り上がった土。
花が崩れないように掘り起こしてみると、そこには私が中学生の時に着ていた体操服の半袖の上着があった。
「何で、これがここに?」
思い返すと中学生の頃、虐めにあい"死ねばいいのに"と落書きをされていた上着だった。
私は"絶対捨ててやる"とゴミ箱に捨てようとしながらも気弱な私には出来なかった。
きっと、そんな不甲斐ない私をラッキーは見て変わりに捨ててくれたんだろう…。
上着にはラッキーが噛んだであろう穴が空いていた。
私は、その上着の泥棒を落としギュッと抱き締め深呼吸した。
そして、眩しく照らす日差しを見上げ
「ラッキーありがとう!ずっと大好きだよ!」
と言ってあげた。
最初のコメントを投稿しよう!