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第8章(夢うつつ)
ぼくの名前は、ラッキー。
ぼくの今いる場所は、広いヒマワリ畑の中。
蝉が夏の音を響かせていた。
ヒマワリ畑の中、舞う蝶々を追いかけている。
でも何故だろう。
不思議な事に暑いというよりは、心地よい暖かさ。
どこからか川のせせらぎが聞こえ、ふと足を止める。
音のする方へ行ってみると、何処かで見た光景が広がる。
確か、ぼくがまだ小さい時ご主人が連れてきてくれた場所だ。
川に足を入れてみる。
けれど、川の冷たさも感じられない。
もしかして……ぼくは……。
そんな不安な気持ちにかられる。
ふと、耳を澄ましてみると誰かが、ぼくの名前を呼ぶ声遠くの方から聞こえた。
それは、優しく暖かい聞き覚えある声、まるで春のそよ風が優しく頬を撫でるような声だった。
その声は次第に大きくハッキリと聞こえてくる。
一瞬、目の前が真っ白になった。
目を開けるとぼくを心配そうに見つめる主人の顔があった。
安心したのか主人は、大粒の涙を流していた。
ぼくは、大丈夫だよと主人が、流す涙を舐めて拭った。
ぎゅっと抱きしめてくれた主人の温もりが一番暖かい。
ぼくは、夢で良かったと胸を撫で下ろした。
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