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ふたりは雑談を楽しみながらディナーを楽しんだ。レストランを出たふたりは、ホテル街に消えた。
ラブホテルの一室、イチカは征嗣より先に入浴してイマドキメッキを流し落とした。息を呑むほど美しい裸体をバスローブで包むと、ベッドに腰掛ける。
「すぐにすませますので……」
征嗣は少し掠れた声で言うと、浴室に消えた。
イチカはベッドに仰向けになって彼を待つ。これからの行為を思うと、躯が熱くなる。
「イチカさん……」
浴室から戻ってきた征嗣は、切なげにイチカを呼ぶ。
「征嗣さん……」
イチカが彼の名を呼び手を伸ばすと、征嗣はその手を握ってベッドに押さえつけ、激しいディープキスをする。
『フレンチキスって聞くと軽いキスだって思う人が多いけど、あれはディープキスのことなんだよ。恋や性に貪欲なフランス人を嘲笑ってできた言葉なんだって』
イチカは征嗣とディープキスをするたび、昔誰かが言っていた言葉を思い出す。もっとも、誰が言っていたのかなんて、思い出せはしないのだが。
「あぁ、イチカ……! 私のイチカ……」
征嗣は悩ましげにイチカの名を何度も呼び、彼女の躯を余すことなく貪る。それはイチカに幸福と優越感を与える行為だ。
「好き、愛してるんだ……、イチカ……」
征嗣は熱に魘されたかのように、イチカを求め続けた。
早朝、イチカは目を覚ますが狸寝入りを決め込む。
隣で征嗣が動いているのが分かる。
「イチカさん……。いつものことながら、加減ができなくてすいません……。私のせいで、せっかくの綺麗な躯が……」
征嗣は申し訳なさそうに言いながら、イチカにつけた所有印を、そっと指先でなぞる。
髪にキスを落とされると、征嗣が身支度する音が聞こえる。薄目を開けると征嗣はスーツを着こなして、部屋から出ていくところだ。
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