シジミチョウの願い

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シジミチョウの願い

B「さてと。 どの辺りにいるかとか目星はついてるの?」 A「あ、えっと、寒いときはみんな土の中で過ごす んだって昔言ってたの」 B「土の中か………。 とりあえずどこか掘ってみようか」 A「………何だかこの公園、見覚えがある」 B「本当? じゃあ、ここにしよう」 A「うん。 ………よいしょ、よいしょ。 手でも掘るの大変だね。 トンボくんも痛いよね、ごめんね」 B「謝らないで。 いいんだ、この手は君のために神様からもらっ たものなんだから」 A「…ありがとう」 B「泣かないで。 ほら、少しずつアリが出てきた」 A「うん………やっと会えた。 ありがとう、みんな。 私のこともこうやって育ててくれたんだよね」 B「………これって」 A「このアリの幼虫を食べているのが、シジミチョ ウの幼虫。 私は、育ててくれるアリの幼虫を食べて大きく なったの。 そうするしか生きていけなかったけど、ずっと申 し訳なくて胸が苦しかった。 だから、この世界から消えてしまう前にお礼が言 えて良かった………」 B「シジミチョウ、体が透けてきてる」 A「もうお願い事が叶っちゃったもんね。 いいんだ、たくさんの命を奪ってきたんだか ら。」 B「僕は好きだよ。 誰かの痛みに繊細な君のことが」 A「……嬉しい、ありがとう」 B「僕も体が透けてきたみたいだ。 願いが叶ったんだね」 A「 消えちゃう寸前に好きになるなんて。 私、もっと早く好きになればよかったね」 B「十分だよ。 君と消えてしまうなら構わない」
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