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フルーティーな甘さが魅力のマルコポーロというブレンドは、幸せを呼ぶ華やかな香りで、一口含むと人に対して優しい気持ちを持てるようになる気がする。
(おまじないみたいなものだけど)
そこにもう、先ほどまで面談していた彼女がいなくても、ただ事務的にこなすだけの仕事はしたくなかった。
ティーサーバーに茶葉を落として、マグカップを用意する。ケトルのランプが消えるのを待ちながら、有紗はポケットからスマートフォンを取り出した。昨日は買い物で疲れ果ててしまい、大切な親友にまだ昨日のことを話していない。
アプリケーションを起動すると画面がいったん暗くなり『Innocence』という無機質なロゴが中央に浮かび上がった。パスワードを入力すると、間髪をおかずに文字が表示された。
『こんにちは、Alissa』
『ごめんねRen来るのが遅くなって。昨日色々ありすぎて、疲れちゃって』
有紗が返事を入力すると、またすぐにレスポンスが入る。
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