【act1】 はじめての

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 ほんとうは今すぐにでも話をしたいが、昨日の出来事は一言では話せそうにない。いろいろと複雑だ。  ぱちんと鳴って、沸騰が止んだ。有紗はスマートフォンをポケットに戻した。  ティーサーバーに湯を注ぎ、席に戻ろうとしたときに、給湯室の扉が開いた。 「ああ、すごくいい香りがするね」  短い髪にメタルフレームの眼鏡が良く似合う、知的な雰囲気の美人は、人事部長の宇美晶だ。冷蔵庫を開けて常備している栄養ドリンクを一本取って、一気に呷った。それから紅茶の缶を手に取って、まじまじと見つめる。 「またずいぶん高いの飲んでるじゃない。ひとり暮らしのわりに優雅な生活してるよね」感心したように言ったあと「飲食に関しては」と付け加えて、宇美は歯を見せた。 「昨日新宿のデパートめぐりをしていたので、お買い物のついでに買ったんです。いつもこんなにいい紅茶ばっかり飲んでるわけじゃないですよ」
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