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「そりゃそうだ。でもね、男なんてあてにしないで今のうちからちょっとずつでも貯金しなさいよ? 四十代半ばになっても独身の可能性だって大いにあるからね」
「えええ……」
宇美は若い頃から仕事に全力投球で、実力主義のこの会社の人事部長の座を手に入れた人だ。そこまでの地位があれば独身だったとしても老後は安泰かもしれないが、自分はそうはいかない。
「ま、綿貫はいい男にモテてるみたいだから問題ないか」
「ぜんぜんモテてないですよお」
そう言ってから、はたと千晃の存在を思い出す。そのタイミングで心を読み透かしたかのように、宇美が腕を小突いてきた。
「うわさになってる人、いるんだけどねえ。しらばっくれる気か?」
千晃はシステム開発を専門とするグループ会社からの出向社員だ。宇美はもちろん彼のことをよく知っている。昨日買い物をしているときに誰かに見られてしまって、もう妙な噂を立てられてしまっているのだろうか。
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