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「システム課に出向で来てる――」
「森住さんとは、買い物に行ったのも昨日が初めてだし、まだぜんぜんそんな関係じゃないですよ!」
このままうわさに一人歩きされるわけにはいかない。有紗が強く否定すると、
「……は?」
宇美がきょとんと目を丸くした。
「私は神長さんのこと言ってるんだけど」
「えっ」
今度は有紗が驚く番だった。
「ちょっと待って、綿貫まさか」
左肩にしっかりとかけられた手を振り切って、
「郵便物取りに行ってきます!」有紗は取るもの取らずに給湯室を逃げ出した。
(ああああ……)
エレベーターホールでボタンを連打しているうちに、頬が熱を持ってくる。自分から火種を撒いて、いったい何がしたいというのか。
宇美は考えなしに、そこらかしこで言いふらすような真似はしないはずだ。けれども、同じ部署で働く上司から、事あるごとにもの言いたげな視線を受け続けるのは耐えられない。
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