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それに関しては何も応えてはくれなかった。昔話のように聞えたが、もしかしたらまだ過去になりきっていない思い出なのかもしれない。
こんなに他人のことを思いやれる人が、振られてしまうことなんてあるのだろうか。それとも、何か特別な事情があって離ればなれになってしまったのだろうか。勝手に過去を想像していると、神長が歩き始めた。
「綿貫さんの場合は、自分を押さえつけようとしない方が良いですよ。少しわがままを言うくらいでちょうどいいんじゃありませんか?」
「そんなことしたら……、嫌われてしまうんじゃないかって思って」
「よく、自分のものさしで他人をはかるなと言いますが、その逆ですね。他人の価値観に縛られて、無理をしないでくださいね。ほんとうは時間を重ねることで、そういうことを自然にわからせてくれる相手がいいんでしょうけれど」
「そうかもしれません。そんな人がいたらって思いますけれど」
その相手がもしこの人だったら。ふと見上げると、視線がぶつかる。
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