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「ごめんなさい。いつもわたしの話ばっかりになってしまっていて。それで、神長さんにお願いがあって」
神長は足を止めて、不思議そうに有紗を見つめている。
「あの、変な下心があるわけじゃないんですけれど。少しだけ手を触らせてもらってもいいですか」
呆気にとられていた神長は、ふいに微笑んだ。
「どうぞ」
有紗に向けて、右手のひらを上にして差し出してきた。
「……ありがとうございます」
綺麗な手だ。顔の造作や等身バランスが良いだけではなく、指まで長い。おそるおそる触れてみると、冷たくなっていた指先に体温が伝わってくる。たったこれだけのことで、胸がぎゅっとなるのはどうしてだろう。
「突然すみません。もしかしたらこうしたら、神長さんのことがもっとよくわかるんじゃないかって思って」
一瞬面食らったようすだったが、神長はやがて有紗の指先を優しく包み込んで、手を下ろした。
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