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「もし嫌じゃなければ、少しのあいだこうしておきましょうか。俺も綿貫さんのことを理解したいと思うので」
ただふわりと重ね合わせるように手を繋ぐ。遠慮がちに触れてくる指が、少しだけくすぐったい。恐怖心もなにもなく、自分を委ねられる心地の良さに酔いしれながら、再び歩き出す。
行きはあれだけ街の景色に夢中になっていたのに、今は全神経が隣にいる神長に向いていて、観光どころではなくなってしまっている。
(好きな人と一緒ならどこで何をしていても楽しいっていうのは、こんなかんじなのかな?)
いつか友人から聞かされた話を思い出し、頭の中に当たり前のように『好き』の二文字が浮かんでしまっていることが恥ずかしくなった。
(でも、神長さんがどんな人なのかまだよく知らないのに好きだなんて思ったら、相手に失礼だよね)
気持ちを落ち着けようと、ゆっくり息を吐き出して、有紗は繋いだ手に少しだけ力を込めてみた。
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