365日のラブストーリー

【act4】恋は落ちるもの

　車を運転するリラックスした横顔、料理を作る相手の気持ちを汲んだ品の良い食事の取り方、冗談を言って笑ったときの目の優しさ、横並びで会話をしているときに少しだけ相手の方に傾く首。

　有紗は知らず知らずに、ため息をこぼしていた。

（仕事中はしっかりと自分の意見の主張できるし、淡々としてて感情が見えないようなところもあるけど。プライベートだと争いごとなんて何も縁がないような、穏やかな人なんだろうなあ）

　月曜にもし職場で見かけたら、仕事用の顔のほうに違和感を覚えるに違いない。

（明日も会えたらいいのに）
　今さっき別れたばかりだというのに、もう恋しくなっている。

（そうだ、写真が）
　跳ね起きて、有紗はバッグの中からスマートフォンを取り出した。

　朝から溜め続けていた通知を確認するよりも先に、写真フォルダを開く。サンルームで撮ってもらったツーショット写真を拡大して、神長の上半身を画面いっぱいに映してみる。