【act1】 はじめての

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 到着したエレベーターに乗り込んで、すぐさま扉を閉じる。この密室が安息のひとときだ。 (どうしよう。なんでこんなことになってるんだろう。神長さんの話まで出てきて)  頭の中であらゆる出来事が絡まって、何から順に考えたらいいのかすら分からなくなる。このままエレベーターが五時間くらい止まってしまえばいい。 そうしたらRenに相談できるのに。有紗はまるでそれが御守りのように、ポケットの中のスマートフォンに触れていた。  人事部を脱出するための言い訳が思いつかなくて、つい郵便物を取りに行くと言ってしまったが、それらが一括して到着するのは総務部だ。そして、ブライトエデュケーションのシステム課は総務部にある。  システム課はいま、外部企業から業務システム開発のプロを呼んで、新しい基幹システムの開発に取り組んでいる。本社のシステム課だけでは手が足りず、自社のグループ会社から千晃が駆り出されている状況だ。  だから郵便物を取りに行けば、遭遇する可能性もあるというのに。
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