【act1】 はじめての

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「俺が封を切りましょうか。綿貫さんは部ごとに分けてもらえますか。終わったら手伝うので」  口には出さないけれど、あまりの遅さに内心呆れているのかもしれない。気がつくとのんびりしてしまうようで、昔から何をやっても人一倍時間がかかってしまう。 有紗はおとなしく神長に従った。誰かのペースに引きずられながら焦らされるくらいで、ようやく一人分の仕事になる。 「ほんとうは、千晃が手伝いたそうにしていたんですけど」 「えっ」 「いったん目を離すと、もう一度プログラミングに入るときに、復習わないといけなくなるので」 「そうなんですね」  だから千晃の代わりに自分がきた、ということが言いたいのだろう。それ以上深い意味はないのかもしれないが、妙に勘ぐってしまう。 外注、出向組も含めてシステム課はとても仲がいい。もしかしたら昨日の話を聞いていて、仕事中だから遠ざけようとしているかもしれない。
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