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千晃の右手が、有紗の手首を掴んだ。そのまま引きずられるように店の外に連行されてしまったが、振り返ると店員は、むっとした様子でこちらをにらみつけている。
(はじめからはっきり断っておけば、あの店員にいやな思いをさせずにすんだのに)
有紗は心の中でごめんなさい、と頭を下げた。それから千晃をちらりと見上げると、やはりこちらも眉根を寄せている。
「要らないってはっきり言わないから、いいカモだと思われてんだよ。欲しくもないのに愛想笑いしながら服買わされるのはおかしくね? 俺がいなかったらどうすんの」
「ごめんなさい」
「謝ってほしいわけじゃないけどさ。勧められてた服も似合ってるようには思えなかったし。シーズンごとに重点販売商品があるんだよ、ああいう店には。だから、相手の体型だとかそういうの無視して売りたい服をすすめてくるわけ」
(体型のこと、結構気にしてるんだけどなあ)
有紗はどうにか笑顔を取り繕った。頭のてっぺんからバスっと両断された気分だ。
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