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「そういうわけではなくて。あの、自分のものは、ちゃんと自分で買いますから」
どうやって返すのが正解なのかわからないまま、とりあえず言葉をまっすぐ受け止めると、千晃は「ふうん」と、ただそれだけつぶやいた。
「有紗ちゃんにはさ、ファーとかふわっとしたものがついたワンピースを着てみてほしいけどな」
千晃は足を止めた。指したのは、店頭のマネキンに着せられた白のニットワンピースだ。
(はい?)
有紗は目を疑った。大きく胸元があいたデザインで、最悪なことにその縁にくるりと一周ファーがついている。太腿の見える半端丈のうえに、裾周りにまでファーがあしらわれている、それこそ究極の太見えワンピースなのだ。
もしあれを着たなら、一秒も気が抜けない。胸にはさらしを巻いて、おなかはガードル。別人の体型を演出しなければならなくなる。それじゃバツゲームみたいだ。
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