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「あれ、ちょっと着てみない?」
有紗は即座に、首を横に振った。
「わたしみたいな人がああいう服を着ると、ぜったいやばいです。周りから白い目で見られます絶対に」
「だったら、俺と二人の時だけ着てればいいんじゃない」
「ええ?」
それは一体、どういうニーズの服なのだろう。
「外でこういう服着てるときにさ、彼女が自分以外の男からそういう目で見られるのは、気分悪いしな。……って、おい心暖」
通路の先に見える巨大ペンギンのぬいぐるみにつられたのか、心暖が「パパ、あっち」と大人顔負けの力で千晃を引きずった。
(彼女……)
有紗は仲の良さそうな親子の姿を見ながら、呆然と言葉を反芻する。やはりあれは、恋人という意味の『彼女』だったのだろうか。
現実の世界では、漫画やドラマとは違って「付き合ってくれませんか?」というわかりやすい告白にオーケーすることから、男女の交際が始まるとはかぎらない。それくらいは、なんとなく知っている。
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