【act1】 はじめての

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【act1】 はじめての

1  アパレルにある鏡が、必ずしも実物を投影しないということはよく知っている。それなのにこの太見えは、一体どういうことだろう。綿貫有紗は鏡の前でくるりと回って、全身をチェックした。 (もう少し細かったら……)  姿勢を正してつま先立ちし、おなかを限界までへこませてみる。 (ああ、やっぱりそれでもだめ)  横から見た姿が特に最悪だ。襟元に入ったドレープが胸のあたりで目一杯広がって、シフォン生地の軽やかな雰囲気が台無しだ。きっと誰が見ても、内側にみっちりと贅肉が詰まっていることを想像するだろう。 「お客さま、いかがですか?」  扉の向こうから女性店員の声がして、有紗は慌てて服を脱ぎ始めた。こんなみっともない姿を絶対にさらしたくはない。  すっかり元の格好に戻ってカーテンを開けると、マネキン人形のように手足の長い女性店員が、口角だけをきゅっと上げた、営業スマイルで待ち構えていた。
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