新井君と佐伯先生

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新井君と佐伯先生

   俺は、古典の先生が嫌いだ。  Yシャツのボタンは全て止められてて、首しまってんじゃないか?ってぐらい上に詰められたネクタイは、いつでも暗い色。  手首のボタンが外れている事は絶対無いから、腕まくりなんてあり得ない。しっかりと着込んだスーツのジャケットのボタンだって、開けられた事も無い。  髪はいつでもぴったりと分けられてて、寝癖も無し。フチなしの眼鏡に指紋どころか埃すらついたことも無くって、元から色白の顔をたまに青くしていることもある。  おまけに三白眼で、抑揚のない喋り方。隙など一切無く見た目通り。無駄口は叩かず、叩くことも許さない。真面目に受けていない生徒は見つけ次第指名。  そんな厳しい奴だって知ってるし、絡まれるのも面倒だと分かっている。だからか、いつもはうっさいクラスメイトもこの50分間は黙って前を向く。黙ってらんない奴らはサボる。  俺だってサボりたい一人だったけど、進路は就職希望。大人しくしといた方が良いのはバカでも分かるだろ。だから、こうやって椅子に座って黒板見つめてんだけど、どーにも眠くなる。  ロボットかよ、と突っ込みたくなる音読を聞いてると、自然と瞼は重くなって…。     
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