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シャーペンを握りながら落ちていく所で、机からガン!と音が上がる。
突然の大きな音にビクっと体を揺らして頭を上げる、やべぇ、また寝てたわ…!涎が垂れないか慌てて口元を拭っていると、隣から冷たい空気を感じた。
「では、新井。次の段、頭から読んでくれ」
「え…っ、えっと…」
「次の段、頭からだ」
「その…」
「次のページ…ここから」
長ほっそい指でなぞれた所に視線を落として息が詰まる。くそっ、漢字難しいし、なんて読むかわかんねぇし…!
音を立てながら椅子を引いた俺が、それでも読めずに棒立ちをしていれば、読み方を教えられた。ああ…また今日もこのパターン…。
だから、俺はこの古典の先生、佐伯が嫌いだ。
受験に向けてラストスパートをかけ始める頃には、俺の受験は終わっていた。
10月頭に受けた面談、過去にウチの生徒が就職をしていると言う倉庫に、来年の春から働く事になったわけだ。バカだから、頭を使う仕事なんてムリだし、これぐらいがちょうど良い。
ガテン系の仕事に就くのに偏見も躊躇いもない。年取ったらどうすんのか不安はあるけど、そりゃ大学行ったって変わらないことだし。まあ、母子家庭で中二の妹がいる俺ん家では、進学なんてあり得ないけど。
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